disease 病気の話

糖尿病

健康診断の気になる項目の中で、メタボリックシンドロームに関わる脂質の他に一般的に行われている血圧や糖尿の検査があるのではないでしょうか?
今回は糖尿という病気をお話しようと思うのですが、まずはブドウ糖の働きからお話ししておかなければいけません。

ブドウ糖とは

「甘いものに含まれる糖分」や「米・パンなどに含まれる炭水化物」は体の中で分解されてブドウ糖になります。
そしてブドウ糖は血液の流れにのって体のすみずみに運ばれて利用されます。この血液中のブドウ糖の量を測定するのが血糖値測定です。

ブドウ糖の働き

ブドウ糖の働きは細胞のエネルギーとなることです。
このブドウ糖のエネルギーを非常に多く必要としている体の部分は脳で、実は体のどの部分よりも多くのエネルギーを必要としています。そしてその脳はエネルギーをブドウ糖からしか得ることができないにも関わらず、ほとんど脳内にブドウ糖を蓄えておくこができません。このため脳が正常に機能するためには一定の血糖値が必要です。血糖値が低くなりすぎると、脳は十分な働きを行うことができなくなってしまいます。体のその他の部分では脂肪などからエネルギーを作ることができます。
しかしブドウ糖が細胞内に取り込まれないことには、やはりエネルギーが不足してしまうのです。

インスリンのはたらき

インスリンはよく鍵にたとえられます。細胞にはブドウ糖を取り入れるための扉があって、インスリンという鍵を差し込む鍵穴がついています。インスリンが細胞の扉の鍵を開けてあげることで、細胞はエネルギーのもとになるブドウ糖を取り入れることができるようになります。

さて糖尿病とはどのような病気でしょうか

読んで字のごとく尿の中に糖分が混じってしまう病気と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?しかしこれは糖尿病という病気の結果として出てくるものなのです。他にも血糖値を測る検査などを行うことが多いので、血液の中の糖の量が多くなる病気と思っている方が多くいらっしゃいます。そこで糖尿病という病気を簡単に説明します。

糖が尿に混じるのは・・・

インスリンがうまく働くことができなくなると、細胞はブドウ糖を取り入れることができなくなります。その結果、ブドウ糖は血液中に非常に多く余ることになります(※高血糖状態)。この状態が長く続くと腎臓の能力を超えてしまい、糖が尿中に出てしまいます。糖が尿に混じるのは糖尿病の最終段階であるとも考えられます。糖尿病の予備軍が多いという話がよくされていますが、健康診断などで尿検査しか行わない場合などはこの最終段階まで糖尿病であることに気づかない場合も少なくありません。この状態になる前に過食など不摂生を改めることはもちろん大切です。しかし糖尿病のサインは「神経痛がする」「疲れやすくなってきた」など糖尿病とは想像できないような形で出てくることもあります。

糖尿病のタイプ

1型糖尿病

すい臓で作られるインスリンの量が絶対的に少ないために起こってしまう糖尿病です。日本では少ないタイプの糖尿病で年少期から発症することが多い。

2型糖尿病

日本で発症しているほとんどはこのタイプでさらに2つにわけることができます。

  • インスリンの量が年齢とともに徐々に少なくなってくることと、過食などの生活習慣とが重なって発症するタイプ。
  • インスリンの量はある程度保たれているのに、細胞の中にうまくブドウ糖を取り入れられなくなるタイプ。

大きく分けてこの3種類に分けられます。
このほか妊娠やほかの病気などが原因で起こる場合もあります。

自己判断はやめましょう

糖尿病の予防や治療と思い、甘いものや炭水化物の摂取を著しく少なくしてしまう方がいらっしゃいます。ご紹介したとおり、脳では絶えずブドウ糖を必要としています。脳のエネルギーは一定量のブドウ糖として必要としているのです。かかりつけの医師から定期的な検査を受けて相談することをお勧めします。

糖尿病の三大療法

まず大きく分けて「食事療法」「運動療法」「薬物療法」という3つの取り組みに分けることが出来ます。
これらの療法を前回お話しした内容にそって大まかに説明すると

食事療法 体の中に入ってくるブドウ糖の量を調節する。
運動療法 体の中で消費するブドウ糖の量を調節する。
薬物療法 「食事療法」と「運動療法」で十分に対応できない部分を補う。

このように言うことが出来ると思います。
血液中のブドウ糖の量が問題となる糖尿病ですから、当然ブドウ糖の入ってくる量と消費する量を調節することになります。しかし何も計画しないで運動したり、食事制限すれば良いというわけではありません。これらの調節を行うにはどのような点に注意するべきか考えてみましょう。※現在、糖尿病の治療を受けていらっしゃる方は主治医の先生とよく相談してください。

食事療法

食事療法の大きなポイントは“食べる方法と質と量”です。
まず1日3食をきちんと食べるようにして、一度に多くの量の食事をとることを控えましょう。インスリンはすい臓から分泌されますがすい臓の働きにも限界があります。一度に多くのものを食べてしまうと、必要以上にすい臓へ負担をかけることとなってしまいバランスを崩しやすくなります。また夜食は取った後に、運動をすることがほとんどなく就寝してしまうため、血糖値を大きく上げてしまう可能性があります。野菜などの食物繊維を多く含むものをとり、ゆっくりと食事をすることを心がけてください。

ブドウ糖に置き換えられる炭水化物を全く摂取しないという方を時々見かけますが全くとらないことは良いことではありません。
量の調整は必要と思いますがバランスの良い食事を心がけてください。またブドウ糖に関わる臓器として肝臓も重要ですので大量の飲酒をする方は飲酒を控えるか、少なくとも休肝日を設けると良いでしょう。

運動療法

運動療法の大きなポイントは運動するタイミングです。

運動は体内のブドウ糖を消費することになりますが、血液中にブドウ糖があるときに運動をしなければ血糖値を下げることにはなりません。運動の方法には年齢などの個人差があると思いますが、食後約1時間の血糖値の高い時に体を動かすことが効果的で、30分以上の持続的に体を動かすことが出来ればなお良いでしょう。
基礎代謝を上げるなど、まずは体に無理をかけない程度の運動から始めることが良いでしょう。「食事療法」と「運動療法」は生活習慣の違いや年齢などに一人一人に違いがあります。まずここにあげたような身近に取り組める内容から初めてみるのが良いのではないでしょうか。気になることがあれば食事の内容、運動の強度などをかかりつけの先生と詳しくお話ししてください。

薬物療法

「食事療法」と「運動療法」ではうまくバランスをとることが出来ない部分を補っていくものです。
生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病では、すぐに薬に頼るのではなく、「食事療法」と「運動療法」は継続して行いながら薬を使用するようにしましょう。一般的な糖尿病の薬はこのようなタイプがあります。

  • 食後の糖分の吸収を緩やかにするタイプ
  • すい臓からでるインスリンを増やすタイプ
  • インスリンの働きを良くするタイプ
  • インスリンを直接補う注射剤

など

検査データや患者さんの生活習慣に合わせて先生がいろいろな薬剤を使用すると思います。
ご自身で先生と相談した「食事療法」と「運動療法」を実践しながら薬を使用してください。糖尿病は現在、予備軍を含めてかなり多くの方が注意しなければいけない病気であり、神経や眼などいろいろな部分に新しい病気を引き起こしてしまうものです。

日ごろから少しずつ取り組みを始めて、年に1度くらいは検査や主治医の先生と相談して発症しないように、もしくは重症化しないように心がけましょう。